
口の中・あご・顔面に生じた病気の治療では、主に4つの麻酔法を用います。麻酔の方法は治療計画を左右する重要な柱です。

口腔内局所の麻酔法は、大人もこどもも同じで、歯ぐきに針を刺して麻酔薬を注入する方法です。うまく麻酔ができれば治療中に痛みを感じることはありません。こどもの場合、うまく麻酔するうえで最も大切なことは、まず目的の位置に正確に注射針を刺すことです。そのためには、じっとおとなしく口を開けてくれていなければなりません。針を刺す瞬間は痛いので、口を閉じたり動いたりして特に危険です。そこで針を刺す瞬間の痛みを和らげるために歯ぐきに麻酔の塗り薬を使うこともあります。上手に、じっと口を開けておいてくれさえすれば、目的の位置に正確に注射針を刺すことができます。そこに麻酔薬液を注入すれば、数分で痛みを感じなくなります。恐怖心や緊張もしだいに取れていきます。そして口腔内局所の麻酔だけで痛みを取り除き、治療を円滑に進めることができます。
しかしじっと口を開けるのが困難なこどもたちもいます。その理由は、
それに比べると2や3の場合は簡単ではありません。その他、小児病棟で入院治療を行う前に歯科疾患(特にむし歯)の治療を急いで済ませる必要があるこどもの場合は、緊張や恐怖心を取り除くための工夫を凝らす時間が十分ではありません。
このようなこどもには、笑気吸入鎮静法・静脈内鎮静法・全身麻酔法のうちのいずれかを、口腔内局所の麻酔と組み合わせると有効です。それぞれの方法には利点と欠点の両方があります。特に全身麻酔法は、全身管理をしっかり行えば非常に効果的である一方、安易に用いるとさまざまな危険に見舞われることがあります。どの麻酔法が最適であるか、こどもの口の中・あご・顔面に生じる病気の種類と治療内容、および全身疾患の種類と程度をもとに、小児科医師・歯科麻酔医とも相談して検討します。さらに保護者の方の希望を尊重したうえで、最終的な麻酔法を決めます。
注)九州大学病院小児歯科では、治療をいやがるこどもの体を無理やり押さえつけた歯科治療は危険であると考え、原則として行いません。外傷や急性炎症など、緊急であると判断した場合のみ、身体抑制下で応急的処置を行うことがあります。その場合も、脈拍数や血液中の酸素飽和度を測定しながら、できるだけ短時間で終えるよう、必要最小限の応急処置だけを行います。
全身麻酔を行う前には、当診療科の担当医および歯科麻酔医から詳しい説明を行います。こどもの病気や障がいによっては小児科医師とも相談が必要です。またあらかじめ必要な検査も受けていただき十分に安全確認をしたうえで行います。

口腔内局所の麻酔法は、大人もこどもも同じで、歯ぐきに針を刺して麻酔薬を注入する方法です。うまく麻酔ができれば治療中に痛みを感じることはありません。こどもの場合、うまく麻酔するうえで最も大切なことは、まず目的の位置に正確に注射針を刺すことです。そのためには、じっとおとなしく口を開けてくれていなければなりません。針を刺す瞬間は痛いので、口を閉じたり動いたりして特に危険です。そこで針を刺す瞬間の痛みを和らげるために歯ぐきに麻酔の塗り薬を使うこともあります。上手に、じっと口を開けておいてくれさえすれば、目的の位置に正確に注射針を刺すことができます。そこに麻酔薬液を注入すれば、数分で痛みを感じなくなります。恐怖心や緊張もしだいに取れていきます。そして口腔内局所の麻酔だけで痛みを取り除き、治療を円滑に進めることができます。
しかしじっと口を開けるのが困難なこどもたちもいます。その理由は、
- 年齢が低いために麻酔の注射や歯科治療が怖い。
- 重い病気のために身体の動きを自分でコントロールできない。
- 年齢が上がっても恐怖心を自分でコントロールできるようになれない。
それに比べると2や3の場合は簡単ではありません。その他、小児病棟で入院治療を行う前に歯科疾患(特にむし歯)の治療を急いで済ませる必要があるこどもの場合は、緊張や恐怖心を取り除くための工夫を凝らす時間が十分ではありません。
このようなこどもには、笑気吸入鎮静法・静脈内鎮静法・全身麻酔法のうちのいずれかを、口腔内局所の麻酔と組み合わせると有効です。それぞれの方法には利点と欠点の両方があります。特に全身麻酔法は、全身管理をしっかり行えば非常に効果的である一方、安易に用いるとさまざまな危険に見舞われることがあります。どの麻酔法が最適であるか、こどもの口の中・あご・顔面に生じる病気の種類と治療内容、および全身疾患の種類と程度をもとに、小児科医師・歯科麻酔医とも相談して検討します。さらに保護者の方の希望を尊重したうえで、最終的な麻酔法を決めます。
注)九州大学病院小児歯科では、治療をいやがるこどもの体を無理やり押さえつけた歯科治療は危険であると考え、原則として行いません。外傷や急性炎症など、緊急であると判断した場合のみ、身体抑制下で応急的処置を行うことがあります。その場合も、脈拍数や血液中の酸素飽和度を測定しながら、できるだけ短時間で終えるよう、必要最小限の応急処置だけを行います。
笑気吸入鎮静法とは
笑気ガスを酸素と混合して10〜30%ぐらいの低濃度になるように調節し、鼻マスクで吸入する方法です。こどもの意識を残したままで、不安感や恐怖心を和らげることができます。声をかけても全くわからないほど意識がなくなる、自分で呼吸する力がなくなるなどの心配はありません。治療が終わったら30分程度休憩して気分が悪くないのを確認して帰宅してもらいます。術前の検査や厳重な麻酔管理は必要ではありません。しかしそのぶん、痛みを押さえる効果も弱く、治療の前に歯ぐきに麻酔の注射をしなければいけません。極度に恐怖心が強いこどもや、アレルギー性の鼻炎などで鼻が詰まっているこどもは笑気ガスの効果が期待できませんのでこの方法は使えません。そのほか、中耳炎にかかっている・気胸がある・眼科で手術を受けたことがある、といったこどもの場合は、笑気ガスの副作用のためにこの方法が使えないことがあります。使用前にかかりつけの医師と相談することが必要です。静脈内鎮静法とは
何らかの理由で笑気吸入鎮静法が使えないこどもに有用です。静脈から点滴を取り、そこから麻酔薬を注射する方法です。麻酔薬の種類と量を調節することで、笑気ガスと同程度のごく浅い鎮静状態から、気持ちよく眠った状態にまで深くする、などさまざまな程度にコントロールすることが可能です。ただし、笑気吸入鎮静法と同じく、歯ぐきに麻酔の注射をしなければいけません。当診療科では現在、口の中・あご・顔面に生じる病気(おもにむし歯)ために小児科での全身的な病気の治療が進められないこどもに用いています。このようなこどもは歯科治療にたいして恐怖心が強いことが多く、かつ急いで歯科治療を終える必要があります。静脈内鎮静法は大変に有効である一方、鎮静状態のコントロールには十分な経験と設備を必要とします。全身麻酔法とは
全身麻酔では笑気吸入鎮静や静脈内鎮静と異なり、完全に意識がなくなります。自分で呼吸もできない、からだを動かすこともできない状態になります。麻酔をかける前から、治療が終わって麻酔から十分に覚めるまで、専門の麻酔医による厳重な管理が必要です。通常は大きな範囲を長時間かけて手術しなければならない時に用います。口の中の狭い範囲に限定した手術やむし歯の治療では、必ずしも必要ありません。しかし「これらの手術や歯の治療が局所麻酔単独または他の鎮静法と組み合わせるだけではできない事情がある」と判断した場合は、全身麻酔の適応となります。全身麻酔を行う前には、当診療科の担当医および歯科麻酔医から詳しい説明を行います。こどもの病気や障がいによっては小児科医師とも相談が必要です。またあらかじめ必要な検査も受けていただき十分に安全確認をしたうえで行います。